第22回 ライヴレポート(?)編 TAI-ON――俺とバンドと代々木ラボの夜

今回は、俺がやっているユニット、TAI-ON(タイオン)がライヴをやった3月27日のことを書きます。震災の被害が比較的少なかった東京ですが、無計画停電(?)や節電が行なわれ、イベントなどの自粛が声高に叫ばれる中で、アマチュアバンドがあえてライヴをやる理由とは?

ライヴが行なわれることを確認して、相方のYASAGUREと相談。まず、決定稿はチケットやCDの売り上げから募金すること。他にもアコースティックでやろうか、喪章をしようか、など、いろんな案を出し合ったけど、「自粛」という案は一切なし。
ライヴハウスがライヴの中止や延期をするなら別だけど、そうじゃない限りは当然やる、との暗黙の了解がありました。普段はあまり熱いことを語りあったりする二人じゃないけど、俺たちなりに出来ることをやろうと、言葉には出さなくとも、お互いに思っていた(はず)。

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TAI-ON
Photo by ヒトミロック
会場は代々木のライヴハウス、「LIVE labo YOYOGI(以下ラボ)」。ここはいつも、ライヴ前に出演者の顔合わせがあって、その際にスタッフから注意事項の連絡があるんだけど、今回は節電や、緊急時の避難についての説明もありました。エアコンはオフ、入り口の看板は消灯、照明の中でもいちばん電力を使うムービングは使わない、エアコンを消すので、寒いというお客さんにはホットウーロン茶を無料で提供、ドリンク代の何割かを義援金として寄付、他にも募金箱を設置、などなど。ホットウーロン茶はいいアイディアだけど、バンドが客席を熱くしろってね(苦笑)。

ラボは震災の5日後から営業を始めたそうですが、「非国民め!」「今アマチュアがライヴをやる意味なんてあるのか!」なんていう苦情があったそうです。大震災のあとにライヴハウスを営業したら非国民?ライヴなんか不謹慎?そう思う人もいるのかもしれないけど、ライヴハウスが自粛して休業したままでいたら潰れてしまう。
ミュージシャンだってそう。プロなら仕事だけど、アマチュアは仕事じゃないから自粛?俺みたいなセミプロは? 

ラボでは営業再開の時期について、何度も何度も協議を重ねたそうです。批判は覚悟の上での営業再開でしょう。また、いくつかのバンドから出演のキャンセルや、延期の申し出があったとも。家族が罹災された方や、今はとてもそういう気分になれない、という人たち。
キャンセルした側の気持ちも痛いほどわかる。やる側もやらない側も、何も考えずに決めたんじゃない。ライヴをやったら偉いとかいうことじゃない。やらない……というより、やれない人たちはきっと、凄く辛かったと思う。

テレビで、罹災された方が「私たちのことを気にせず、楽しんだり、笑ったりしてください」と言っているのを見たけど、そう言われても、気にします。俺なんかが想像も出来ないほど辛い思いをしているだろうに、そんな言葉を言ってくれる。
それなら俺らは元気でいなきゃだめだろう!音楽には人を元気にする力がある。罹災された人たちの中にも、きっと今、好きな歌を聴きたい、歌いたいと思っている人もいると思う。
ほかにも避難所でトランペットを演奏した女性の映像を見たけど、同じ避難所にいた人たちは、涙を流し、「感動しました」「元気をもらいました」と口々に言っていた。音楽って、辛いとき、悲しいときにだって聴きたくなりませんか?

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Photo by ヒトミロック
それと東京でライヴをやることは違う? そうかな? 被害の少ない地域でも気が滅入るニュースや毎日続く余震のせいで、揺れてない時もずっと揺れてるような気がするっていう友人がいる。被災地が出身の友人はずっと家族や友達のことを気にかけてる。
そういう人たちを元気付けることも、俺たちがやれることなんじゃないのか。自分たちが出来ることを、少しずつでもやる。こういうとき、大きなバンドが動くには、大勢の観客の安全管理、会場側との協議など、きっとたくさんの問題が起こるでしょ? でも俺たちなら、もっと身軽に動ける。そこがアマチュアバンドのいいところ!

この日の出演者は皆、震災についてのMCをし、義援金を募ったりしていました。もちろんTAI-ONも。そして、いつも通り、爆音で演奏したよ。被災した人たちのことを、ずっと心に留めて演奏した。震災で亡くなったギターキッズがいたかもしれない。
バンドマンだっていたかも、だ。俺はそういう人たちのためにも、誰がなんと言おうと、絶対にギターを弾くことをやめないのだ!

ライヴの後、何度も「楽しかった!」って言ってもらった。もちろん自分たちも楽しかった。義援金として5000円を寄付することが出来た(これを少ないと思う人は思って結構)。
そして、この日のラボはとってもピースな空間だった。皆がそう感じていたんじゃないかな。偽善だとか、自己満足だとか言いたければ言ってくれていい。
でも、断言出来る。あの日、ラボに集まってくれた人たちの中には、非国民なんてひとりもいなかったよ!