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<感謝をこめて>

ついにvol 100まで来た。次の大台は1000なのだろうか、だとすると当分先で到達できそうにないので今回は盛大に盛り上がろう。と言ったもののどう盛り上がって良いのやら。特に感慨深いわけでもないし、私の独り言も良く続いたなぁと思う位だが、今回は私の中でこの頃特に存在感を増してきたある技術、そしてある方のことに触れたい。

MMさんに出会ったのは10年以上前、私がまだこの仕事を始めていなかった頃。ジュエリーらしいジュエリーに、興味も所有欲も無かった私の眼を開いて下さったのがMMさんです。MMさんの彫金技術はイタリアの伝統的な金細工職人のものです。しかしイタリアのこってりてんこ盛りのものではなく、どこか更に繊細で私たち日本人の感性に沿うクールな魅力を漂わせていました。ものすごい技術なのにさらっと素知らぬ顔、みたいな感じです。

最初は一ファンとしてスタートしたMMさんとの交流。私がアクセサリーをつくる様になってもその関係は暫くそのままでした。が、皆さんにいいねいいね、と言われ"いいでしょ"なんて自慢しているうちにふと"私のものが好きな人はこれも好きなんだ"と気付いてしまいました。

さてどうするべきか。彫金の世界はさっぱりの私は、MMさんに相談しつつ進めていくしかありません。おっかなびっくり始まったMMさんとのコラボ。技術も知識も無い私はうまく会話が出来なかったり、ずいぶんご迷惑も掛けてしまったことでしょう。彫金の職人さんたちは分業ですから、MMさんは更にその先の職人さんたちに色々と通訳して下さったことと思います。

p100_1.jpg MMさんの手から生み出される透かしの技術は、本当に繊細で美しく溜息が出ます。とんでもない技術なのですが、私はこれを誰かが引き継がなくてはと大胆にも考え、教えていただく約束をしました。もちろん絶対にムリだと頭では分かっていますが、そう言わずには、行動しないではいられなかったのです。でも彫金のイロハくらいはどこかで習って来てねと言われ、只今彫金教室通い中。しかし途中で寄り道ばっかりで、課題と違うお仕事をちょこちょこするものだから、ちーっとも進みません。かと思うと課題なのに凝りに凝ったものを手掛けて一年もかかってしまったり、困った生徒です。目下のところ課題外の実地で技術や知識が溜まっていく状況です。

このところ自身の病が良くないMMさん。調子の悪い時は何も出来ない日々もあるそう。目も見えにくくなってこの仕事も少しづつ私にバトンタッチされている。これから教えていただかなくてはならないのに。こんな状況になってなぜか最近MMさんの技術を必要とする仕事が増えている。なんで?!急に追い立てられて必死に仕事を進める。更にこんな時に限って急にあれこれこの技術で作りたくなる。どうして?!どんな形になるか分からないが、どうにかしてMMさんの世界を残したいと感謝を込めて願っている。